絵画の新しい方向性を示す画法「アジェンス」は、瞑想的なグラフィックスと絵画を特徴としています。作品を目にする人が、画家と共に作品を創り、イメージを「描き」、画家が示した世界を再構成していく表現形式です。一人一人が、作品を眺めるその瞬間において独自の空間を持つことができます。オルガ・ブルツエヴァはこの手法により、非常に数多くの作品を手掛けてきました。
オルガは作品を描く中で、純粋に思考を巡らせるレベルから、積極的な創造を意識するレベルへと上昇していきます。これは非常に複雑なプロセスであり、手元の作業に完全に没頭する必要があります。しかし、心躍る旅をあえて選んだのであれば、オルガ・ブルツエヴァの作品に新しい世界をすぐに見出すことができるはずです。オルガの作品は、感情や気持ちの海のように深い部分を、作品を見る人に探らせてくれます。
オルガ・ブルツエヴァの絵画は、一連の式が続くような、視覚的なサインを体系的に取り入れています。宇宙の厳しい現実を理解しようと人類が数百年、数千年と重ねてきた歴史が、オルガが作品を手掛ける中で一筆ごとに描く線やリズムに込められています。
オルガは時に非常に哲学的な作品を発表します。作品例には、別名「ビッグアップル」の大都市ニューヨークでさえも慰めにならないほどの悲しみ背負った、没落した領主の様子を表現した「領主Lの悲しみの湖」があります。
三部作の「土星の魂」に加え「キーズ。マトリックス17 」「ノスタルジア 」「パリ 」には特に、オルガの画家としての独特のスタイルが反映されおり、じっくりと眺める価値があると言えます。大胆な色を使いこなした、深みのある素晴らしい作品は、過去の巨匠を彷彿とさせます。
オルガのスタイルモチーフが基にしている有名な画家には、マリャビンの旋風(「孤独の日の出」「第九の門」「懺悔の火曜」)、マティスの即興性(「ダンコ」「エデンへの帰還」「テムズ」「ジヴァの踊り」)、ゴンチャロフの勇気(「キーテジ」「青い太陽」「エヴィータ」)、ポロックの解放(「クベラ」「カイラシュ。世界の頂点」「オスカー」「ヒマラヤの鏡」)があり、彼女の作品の数々において生かされています。オルガは過去の巨匠の作品を真似るのではなく、彼らの美しい描き方の本質を捉えているに過ぎません。このようにして、オルガは独自のビジョンと理解、オリジナルの芸術的感性を表現しているのです。
面白いことに、オルガはパベル・フィローノフによる作品の本質にも深く踏み込んでいます。フィローノフが熱心に目指した「絵のように美しい調和を定式に取り入れる」という目標には、筆者も非常に強い関心を抱いています。
このレニングラードが生み出した天才を多くの人々が追い続けていますが、誰一人として彼の作品の本質を捉えられていないことは周知の事実です。しかしオルガは、独自の芸術センスを持って、この複雑な芸術の巨匠が抱いていた考えを理解し読み解こうとしています。オルガ・ブルツエヴァは、世の中の外見的な美しさを発展させるだけでなく、内面的な知識も共に発展させるような作品を手掛けています。オルガは制作活動を通して、作品を描くキャンバスに何らかの絵画上の定式を作り上げようと試みています。
オルガの代表的な作品シリーズ「宇宙の公式」には、「愛」「希望」「忍耐」「沈黙」があります。プラスチックのエッチングとして描かれた、典型的な静物や人物(アダムとイブなど)を通して、作品を鑑賞する人は世界を根本から理解する基本を体験できます。筆者の意図はここで明らかになります。衝動と自発性を芸術体系に取り入れる、つまり、コンセプトは「合理性」です。現代ファインアートの迷宮を理解する上での新しい一歩を、オルガはここから踏み出します。
真の芸術家とは常に時代に先立つものです。オルガの作品の中にはそのような趣のものがあり、「第六人種」「帰還」「イースター。火が燃えている」などが例として挙げられます。幅広くスケール感のあるデザイン、イーゼルに立てかけられたものから小型のものまで存在感ある作品を通して、創造の喜びや存分に自由な想像、この世に存在する素晴らしい歓びを体験することができます。
基礎は整いました。道ははっきりと明るく照らされています。空路は順調、喜びと光と幸福にあふれる都市へと向かっています。実に、オルガ・ブルツエヴァの惑星には、花や木、そして動物や人間といった、生物が暮らしています。オルガの惑星の軌道に乗ると、新たな未来へとつながっていく面白い発見を次々と体験できるでしょう。そして、新しい世界、宇宙、自分自身を、今までにない視点から見つめられるようになるでしょう。
V.ツベタエワ
芸術家見習い。
歴史に裏打ちされた独創的な作品群を持つモスクワの若き画家オリガ・ブルツェヴァほど、アバンギャルドの精神を再認識させることのできる現代ロシアの画家はいないだろうと言われています。
彼女の作品は、最もひねくれた見方をする人々にも前衛美術が決して忘れ去られていないことを思い出させてくれます。それは、ブルツェワのような若いクリエイターの心の中で止まることなく勇敢に、そして勝利に向かって進んでいるのです。この作家は、写実主義的絵画の盲目的な奴隷状態から解放され、色、リズム、線の全くユニークで表現力豊かな世界へと踏み込んだのです。
この絵画は、鑑賞者が美的体験を想像以上にコントロールすることを可能にします。偉大な分析的アーティスト、パベル・フィロノフの作品に容易に匹敵する魅力により、私たちは感情的でさわやかな主観的表面に引き込まれます。絵画の豊かな質感や構成の魅力に惹かれながらも、鑑賞者は意識的に自分を育て、探求していくことで被写体をじっくりと味わうことができるのです。
オリガ・ブルツェワの作品は、深く哲学的であり、また、象徴的な要素をふんだんに含んでいて、画法と情熱のありそうでなかった魅力的なマリアージュを見せてくれます。彼女の繊細な感受性は自由な表現によって相殺され、作品が伝統的なものを想起させながらも、新しい美的手法を取り入れることを可能にします。彼女の作品は、まるで自然の基盤の中で動いているかのようにコントロールと自由が対立することなく、最適な方法で機能する平面上にあります。
エミリー・ジョー・キュアトン
美術史家
ナショナル・アーツ・クラブは、オリガ・ブルツェヴァの “Return of the Lunar Avant-Garde”を開催できることを大変嬉しく思います。110年間の歴史を持つ芸術施設の会長として、ここに数多くのショーを見てきました。しかし、オリガのように若い芸術家は稀です。彼女は直感と意欲、刺激的で生命力ある若い芸術家です。私は、オリガの作品が最初に私に与えた衝撃のごく一部でも、鑑賞者の皆さんの心に響くことを願っています。
キャンバスには哲学的発達により和らげられた若々しい活気に満ちています – これは調和の取れたコラボレーションであり、このように気まぐれで奥深い要素がユニークで魅力的な第一印象を生み出すのだと私は信じています。ブルツェヴァの作品において音楽的な質の高さは否定できません。これは色、リズム、ラインのバランスをとる芸術であり、最終的には一種の視覚的ポリフォニーとなります。この作品を見ると、おそらく多くの人が踊り出したくなるでしょう。そんな時私はこう言います。「恐れることはありません。これは許されることなのです」
Ms. ブルツェヴァがマレーヴィチ、カンディンスキー、ゴンチャロフ、さらにはポロックなどの著名人と比較されるのも不思議ではありません。”Return of Lunar Avant-Garde”で目にするものは身近なものであると同時に異質なものでもあるでしょう。先人達に思いを馳せながら未知の世界に向かって突き進む才能豊かなアーティストにとって、伝統を重んじつつ未来に向かって踏み出すナショナル・アーツ・クラブほどふさわしい場所はないと思います。
オー・アルドン・ジェームス・ジュニア
国立芸術クラブ
会長
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